のらケミスト

中小化学企業で新規事業とか技術開発している人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

Industrie 4.0 調べてみた その8 〜化学産業の将来像を考察〜

こんにちは。
これまで⻑々連載させていただきましたが、やっと最終回です。

まず、前回までのおさらいです。

第⼀回:世界各国でこれからの製造業界のあるべき姿、特にIoT、ロボット、AI技術を取り込んだ製造業の姿を考え始めてるよ。
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第⼆回:Industrie4.0は製造業を細かくモジュール化しようとしてるよ!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第三回:モジュール化すると性能上がるわ価格は下がるわでユーザーメリットが⼤きいよ!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第四回:⾼付加価値領域と低付加価値領域の組み合わせで製品アーキテクチャを設計し、⾼付加価値領域を⾃社でクローズし、低付加価値領域を新興国に任せるという、グローバル斜形分業が⼤事だよ!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第五回:管理シェルはコンポーネントをモジュール化しネットワークに接続するためのもので、デジタルツインは現実世界の各コンポーネントをデジタルで再現するためのものだよ!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第六回:管理シェルとデジタルツインを組み合わせると、製造業をコーディングできるようになるかも!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


第七回:新興国でモノを作って売る、先進国はプラットフォームを提供して世界のGDPからちょっとずつマージンを引き抜く、そんな新しいグローバル分業の形が現れ始めているよ!
tamagoyaki1999.hatenablog.com


今回は、 これまでの話を統合して、これからの製造業の有り得る姿を考察します。(実現へのハードルの⾼さは無視しますね)

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⼀例として、上図のような世界を想像しました。

ユーザーは製造サービスプラットフォームから必要なサービスを選び、
各サービスの詳細をプログラムすることで、
⾃⾝の実現したい製造プロセスをサイバー空間で組み⽴てます。
これを実⾏すると、サイバー空間上で構築された製造プロセスが、現実空間で再現され、製品がアウトプットされます。

例えば、ある起業家Aさんが、独⾃組成の樹脂を⽤いた⾯⽩いプラスチック成型品ビジネスを思いついたので、製造サービスプラットフォームから、樹脂合成サービス、成形サービス、物流サービス等を選び、⾃⾝のアイデアをプログラムに書き起こし実⾏しました。
このとき、プログラムに記述するのは、「どういう樹脂を合成する」、「どういう成形加⼯をする」、「どこに届ける」という感じの、製品仕様に関わる情報くらいです。

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すると、Industrie4.0コンポーネントとして登録されている樹脂合成企業群、プラスチック成形企業群、物流企業群からラインの空き状況が⾃動的に確認され、最⾼効率なサプライチェーンと加⼯スケジュールが⾃動⽣成され、製品が製造されます。

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起業家Aさんは、合成、成形、物流など、各⼯程の現場で何が起こっているか知識もなければ感知もしませんが、製品を⽣み出すことができました。

これまでは製造業を営むには、⼤きな資本をもって⾃社⼯場を経営するか、サプライチェーンを構築するためにパートナー企業を探して現場を巡る必要がありました。
製造サービスプラットフォームを使えば、そういった障壁は取り除かれます。
さらにスケールアップもプログラムを書きかえるだけで柔軟に対応できるため、少量のテストマーケティングから⼤量⽣産までシームレスにスピーディに移⾏できます。

こんな世の中になったらワクワクしませんか?
Webの利⽤コストが劇的に下がったことでアイデア勝負のITベンチャーが⼤量発⽣したように、現時点では初期投資が⼤きく⽐較的成功しづらいと⾔われるモノづくりベンチャーが⼤量発⽣するようになるかもしれません。

こんな世の中を実現するためにはどうしたらいいでしょうか。

スマート⼯場のモデルとなるマザー⼯場が誕⽣

⼯場内の設備、⼈、在庫、サプライチェーンとの連携などのデジタルツインを実現、全⾏程をデジタルで再現できるようにします。
デジタルツイン技術をベースに、管理シェルを設計し、各⼯程をモジュール化します。
モジュールの組み合わせで構成されたマザー⼯場が誕⽣します。

Industrie4.0コンポーネントとしてのスマート⼯場を普及させる

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IoTやロボット技術を駆使したスマート機器で構成された、管理シェルによって規格化されたスマート⼯場を普及させます。(スマート⼯場は標準化されたコモディティです)
この際、スマート⼯場のモデルとなるマザー⼯場がどこかにあることが想定されます。
マザー⼯場では、スマート⼯場群から上がってくるデータを集約し、スマート⼯場の管理・運営・保守、⼯程の改善、新⼯程の研究・開発などを⾏います。
⼀⽅、スマート⼯場群はオペレーション業務のみを⾏います
マザー⼯場は⼀企業が所有するかもしれませんし、標準化団体が所有するかもしれません。
スマート⼯場群を⽤いてモノづくりをするのは、⼈件費、物流コスト、税制、国内市場サイズなどを考慮して、最も安くモノづくりできる企業でしょう。

スマート⼯場普及の際にも、プラットフォーム獲得競争が起こることが予想されます。
第四回で紹介したPCのビジネスモデルのように、だれかがスマート⼯場の基幹部品とリファレンスデザインを組み合わせたプラットフォームを提案して、デファクトスタンダードを獲得するかもしれません。
そのとき、基幹部品となるのがIoT化したスマート機器のようなものかもしれませんね。

コモディティ化したスマート⼯場と、それらの進化を制御するマザー⼯場という構図ができたとします。

スマート⼯場を束ねるプラットフォーマーが誕⽣し、プラットフォームを活⽤するユーザーが出現

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歴史的に、ある製品がコモディティ化すると、その上位レイヤーにプラットフォームが出来上がります。
PCが普及したらその上位レイヤーにクラウドサービスが出現しました。
スマート⼯場もコモディティ化したのちは、共通のIT基盤上で管理・運営されるようになると考えられます。
さらに、IT基盤の汎⽤性が⾼まるにつれ、広く広くIT基盤とスマート⼯場が公開されるようになり、それを利⽤するユーザーが出現してくるでしょう。
ユーザー、プラットフォーマー、スマート⼯場群、マザー⼯場、スマート機器(基幹部品)メーカー、といったプレーヤーが揃うころには、新しい⽔平分業の形が出来上がっていると考えられます。
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プレーヤーは誰になる?

  • ユーザー:技術への理解がなくともモノづくりができるようになるため、ベンチャー企業、商社、メーカー、広告代理店、IT企業など多業種からの参⼊の可能性があります。
  • 製造プラットフォーマーここはITシステムになるので、メーカー系プラットフォーマー(GE,Siemensのようなところ)とIT系プラットフォーマーAmazon, Google, Intelなど)の参⼊が考えられます。メーカーはモノづくりの強みがあるうちに⾏動したほうがいいかもしれません。GEはモノづくりのノウハウの強みがある今なら、GoogleAmazonに取り込まれずに済むと考え、独⾃ITプラットフォームのPredixを作ったそうです。IT系プラットフォーマーはモノづくりのノウハウを何とかして取り込もうとしてくるでしょう。(以前記事を書きましたが、AIの知財もその⼿段になるかもしれないと思い怖いなと思ってます。)
  • スマート⼯場(Industrie 4.0コンポーネンツ):メーカー。ここはマスプロにもマスカスタマイゼーションにも対応するために、相当安価な企業が参⼊する必要があります。そのため、⼈件費、税制等で、とにかく安く作れる企業が⼊るでしょう。技術⼒は、マザー⼯場を持つ企業から供給されるため⼼配無⽤です。
  • マザー⼯場:既存のリーディングメーカー企業。技術⼒、政治⼒、資本⼒、経営⼒などのある企業が先導するのではないでしょうか。Boschはもうスタートしています。オークマなど、⽇本でもスマート⼯場化へ踏み切る企業は現れています。もしある先進企業の技術でマザー⼯場ースマート⼯場群の構図が出来上がると、その技術や標準に関わらない企業は、先進企業の技術で武装した低コストなスマート⼯場群との競争にさらされます。
  • スマート機器:機器メーカー。(知識不⾜でここまでは想像⼒が働きません。。)

ビジネスモデルは?

このような⽔平分業を構想したときに、第六回で考察したように、どこを⾼付加価値化及び低付加価値化し、それぞれ誰に担当させるか、というパイの奪い合いが起こるでしょう。

⼀番簡単な構図としては、まずスマート⼯場群が低付加価値化し、途上国に普及します。プラットフォーマー、マザー⼯場、スマート機器メーカーは途上国の成⻑から何らかの形(利⽤料、保守、機器販売など)マージンを獲得します。また、ユーザーはスマート⼯場群を利⽤してカスタム製品を安く⽣産し、ハイエンド市場で利益を上げます。

このように、この世界観全体のスケールでもパイの取り合いは起こるでしょうし、マザー⼯場とスマート⼯場の関係の中や、スマート機器とマザー⼯場の関係の中のような⼩さい枠組みでも起こるでしょう。
いずれにしても、優位なポジションを獲得するのは、最初にエコシステムを描いて周りのプレーヤーを先導する企業です。
仮にこんな世の中になったとしたら、どのポジションにいたいですか?

今回考察した将来像は、世の中の動きを調べた結果私はこう思いました、というものなので、ほかにも可能性は無限にあるとは思います。
いくつもシナリオを想定して、それぞれに準備しておくことが重要だと思います。

参考図書

技術を強みに事業を展開するために知っておくべき事実。競争力は技術力も込みの総合的な力で決まる。

技術力を強みに事業展開するための代表的な戦術。

プラットフォーム企業と呼ばれる超大手企業がとっている戦略を科学的に論考。

Industrie 4.0 調べてみた その7 〜GEのビジネスモデル〜

概要

社内のITプラットフォームを世界のモノづくり企業に売るよ!
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こんにちは。
前回は、Industrie4.0は製造業のモジュール化を⽬指している、それが進むと製造業をプログラミングする時代が来るかも!?という話をしました。
今回は、グローバル分業の新しい姿になるかもしれない、GEのビジネスモデルの話です。

ちなみに、みなさんGEって何をやっている会社かご存じでしょうか?
私は最近初めて何やっている会社か聞きました。
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www.itmedia.co.jp
昔はいろいろやってたようですが今は、
エネルギー・輸送・医療領域に明確にポジショニングし直したそうです。
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上の写真はGEのビジネスの歴史です。
ʼ80年代:⼤型機器の販売と修理
ʼ00年代:⻑期保守契約に基づくサービス業。機器にセンサを⼊れて稼働状況をモニタリング・分析し、適切なタイミングで保守作業を⾏う。(これがジェットエンジン販売×メンテナンス×ファイナンスによるビジネスモデル。 この話もとても⾯⽩いですが、今回は割愛。)
2012年以降、「ハードウェア主体のテクノロジーカンパニー」から「ハードウェア+ソフトウェアによるソリューションカンパニー」へと変⾰するために、2012年以降、シリコンバレーにソフトウェアの研究所を設⽴したりとソフトウェアに多額の投資をしました。
そのソフト部隊がまず⼿始めに作ったのが、社内共通ITプラットフォームであるPredixだったそうです。
近年:アナリティクスによる⽣産⼯程全体の効率化。(インダストリアルインターネット
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GEはジェットエンジン、電⼒、医療など分野の違う仕事をしていますが、基本戦略はいずれも似たような感じで、
①スマート機器(エンジン、タービン、MRIなど)の販売&メンテ
②スマート機器をきっかけにシステムの最適化
③オペレーションや運営の最適化という感じで、だんだんとお客さんへの影響⼒を強め、サービスの幅を拡⼤しています。
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このようにスマート機器販売からアナリティクスへと幅を広げていく中で、Predixという社内向けITプラットフォームも洗練されました。
ここらへんで、
Predixを外販してもいいんじゃない!?
と気づきます。

新しいグローバル分業の姿が⾒えてきます。

前の話に戻って、PCのときのグローバル分業は以下のような構図でした。
アーキテクチャの中の⼀部の部品に付加価値を集中させ、先進国が⾼付加価値部品(≒⾼価格部品)でビジネスをし、新興国が低付加価値部品(≒低価格部品)でビジネスをするという分業になっていました。
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新しいグローバル分業の姿として想像できるのは、
全部の部品が低付加価値化し(結果的に最終製品も低付加価値化)、
その代りに全部の部品関わるようなプラットフォームが存在するという構図です。
モノづくりは全部新興国に任せて、モノ⾃体には価値(価格)を乗せません。その代り、新興国企業がモノ売りで上げる利益からちょっとずつマージンを集めます。
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⾔わんとすることはわかるけど、これ成り⽴つ?と思うかもしれません。
少なくともGEは1%の効率化を実現するプラットフォームをグローバルに展開することで相当⼤きな売上が上がると想定しているようです。
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Boschも製造プラットフォームサービス事業をスタートしています。(AWSやPredixのようなプラットフォーム提供というよりSIerかな?)

  • ステップ1:⾃社⼯場をIoTやロボットによりスマート化し、出来上がったスマート機器や培った知識を製造プラットフォームという形に落とし込みます。
  • ステップ2:製造プラットフォームを外部へ提供。提供先のイベントデータは⾃社マザー⼯場に集約し、テクニカルサービスやプラットフォームの価値向上などに利⽤。
  • ステップ3:製造プラットフォームの汎⽤部分を切り出して、⾃社のポートフォリオ外の事業会社へサービスを提供

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確かに、世界経済のバランスがここ30年で⼤きく変わってきているので、ありうる気がしています。
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⼀昔前は世界のGDP総額のほとんどを先進国で占めていたので、⾼価格な商品を⾼いシェアで先進国に売るというビジネスモデルは合理的だったと考えられます。
これからは単価の超安い製品が新興国中⼼に超⼤量に出回ることでGDPが成⻑していくシナリオも考えられます。(要検証)
先進国で超安い商品を超⼤量に⽣産してグローバルに展開することが合理的かはわかりませんが、
もし、⾮合理的だったらどうするか?
現在、多くの企業はまだまだモノに⼤きな価値があるヘルスケア領域に注⼒していますね。⾼く売れる商品がなくなってきたから、新たに⾼く売れる商品を作ろう!という戦略です。
それ以外にも何かある?あるいはそれすらコモディティ化したらどうする?と聞かれた場合に、
上記のような薄く広く集める戦略も成り⽴ちそうな気がします。

「世界の経済成⻑から1%のマージンを引き抜く」

そんなビジネスモデルを考えても⾯⽩いかもしれません。

参考図書

技術を強みに事業を展開するために知っておくべき事実。競争力は技術力も込みの総合的な力で決まる。

技術力を強みに事業展開するための代表的な戦術。

プラットフォーム企業と呼ばれる超大手企業がとっている戦略を科学的に論考。

Industrie 4.0 調べてみた その6 〜製造をプログラミング?〜

概要

モジュール化 × デジタルツイン = 製造プロセスのコーディング?
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こんにちは。
前回は、IoTと管理シェルでモジュール化をしますよ、それからそれぞれのモジュールのデジタルツインを実現しますよ、という話でした。
モジュール化 × デジタルツイン で⾯⽩い世の中が想像できます。

それは、製造プロセスのコーディング(プログラミング)です。
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オブジェクト指向の、クラスとインスタンスに対応する現実世界の物事をモジュールとコンポーネントとここでは表現します。
オブジェクト指向のプログラムのように、各モジュールに対応するクラスを定義することができます。
そして、クラスに対応した管理シェルをかぶせることで現実のモノはモジュールとなります
例えばデジタルでRobotArmというクラスを定義し、対応する管理シェルを現実のロボットアームに搭載すれば、そのロボットアームはIndustrie4.0モジュールになります。
このとき、そのロボットアームがFANUC製だろうが三菱電機製だろうが関係なく、デジタル上では同じクラスとして扱えるようになります。
その状態で、コード上でRobotArmクラスのインスタンスを宣⾔すれば、現実世界のロボットアームがコンポーネントとしてアサインされます。
さらに、宣⾔したインスタンスに命令を与えると、対応するコンポーネントであるロボットアームによる加⼯が始まります。
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上の図の例でいうと、RobotArmクラスのroboArmインスタンスを宣⾔し、プリント基板を加⼯してという命令drill(PCB)をroboArmインスタンスに与えます。
すると、現実世界でRobotArmクラスのモジュールだと管理シェルによって定義されたロボットアーム群のいずれかが、roboArmインスタンスに対応するコンポーネントとして、ドリル加⼯を始めるということになります。

ロボットアームのような装置を例にしましたが、Industrie4.0の思想ではモジュールの区切り⽅は装置に限りません。
複数の装置が接続された制御盤やシステム全体、ライン、部署、会社、いずれもそれぞれに適切な管理シェルが被さり、モジュールとして認識され得ます。
例えば、繊維クラスのインスタンスを⽣成したとき、現実では旭化成東レなどの繊維会社がコンポーネントとしてアサインされるイメージです。
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ロボットにある加⼯をしなさい、という命令をプログラムすることもあれば、会社に製品を作るようプログラムすることもあるでしょう。

こういう概念は参考資料に明確に書かれていました。

これだけだと普通じゃん!という感じなのですが⼤事なのは、管理シェルで個性が消されているので、世界中のどのロボットアームがアサインされてもいいということです。
とすると例えば、⽣産技術を横展開しやすい、企業間連携がスムーズになる、などいろいろな解釈ができます。

⼀例に、サプライチェーンについて考察してみます。
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現状、各企業が独⾃のサプライチェーンを作って商品を⽣産しています。例えばプラ製品を考えたら上図のような感じですね。原料サプライヤーを変更したら製品に不具合が出たという話はよく聞きますので、如何に安定、安価なサプライチェーンを作るかが競争⼒にもなっているかと思います。
この場合は、同じ加⼯をしようと思っても業者を⾃由に選べるわけではありません。
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管理シェルによって各企業の個性が消されると上図のようになります。どこから調達してどこに供給してもよくなります。
加⼯の命令が打ちこまれると、どこかのキャパに余裕のある企業が⾃動的にアサインされ、命令に対応します。標準化されているのでそうしても不具合は起きません。
というように、⽇本の事務所のPCで1⾏コードを打ち込むだけで、⾃社内に限らず世界のどこかにあるIndustrie4.0コンポーネントが動いてモノを作ってくれるようになるかも。
夢が広がりますね!

参考図書

技術を強みに事業を展開するために知っておくべき事実。競争力は技術力も込みの総合的な力で決まる。

技術力を強みに事業展開するための代表的な戦術。

プラットフォーム企業と呼ばれる超大手企業がとっている戦略を科学的に論考。

Industrie 4.0 調べてみた その5 〜管理シェルとデジタルツイン〜

概要

モジュール化するためにIoTや管理シェルという概念を導⼊するよ!
デジタルツインは現実世界をデジタル世界にコピーすることだよ!
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こんにちは。
前回、前々回では、PC市場では、モジュール型の製品アーキテクチャを作り、グローバル斜形分業すると利益が⾃社に集中しました!という話をしました。
話をIndustrie4.0に戻して、
製造業のモジュール化の⽅法論としての管理シェルと、
モジュール化を最⼤限活かすデジタルツイン
という概念についてです。(参考

そういえばモジュール化ってなんですかね?
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左は⽯垣で、右はレンガです。
左は不定形で、右は定形です。
左はアナログで右はデジタルです。
左は⽯選びと隣り合う⽯との相性が重要で、右はその辺気にする必要がありません。
左は⽯と⽯の間のつなぎ合わせに⼩さいこれまた不定形の⽯を使い、右はレンガとレンガの間は全部同じセメントで固めています。
左は摺合せで右はモジュールの組み合わせです。

モジュール化の要件として、

- コンポーネントの形が決まっていること

がひとまず必要そうです。

Industrie4.0でもこれらを決める必要があります。
コンポーネントの形は、リファレンスアーキテクチャでなんとなく決めました。
コンポーネントの具体例としては、装置、⼈、部署、会社、設計、製造などのアーキテクチャの軸上のものだったり、設計会社、製造職⼈など交点にあるものなどがあります。
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モジュール化のための管理シェル

次はコンポーネント間の接続⽅法ですが、ここでIoTや管理シェルという概念が導⼊されます。
ここでの接続とは情報の接続を意図しています。
コンポーネント間で情報をやり取りするには、情報のフォーマットをそろえる必要があります。
現実としては、コンポーネント間で情報のフォーマットが⼀定でなかったり、そもそも情報を吐き出すようにできてないコンポーネントも多々あると思います。
なので、
①情報を吐き出さないコンポーネントには情報を吐き出す仕組み、
②情報のフォーマットをそろえる仕組み、

が必要となります。

①のためのIoT&ロボット

例えば装置にセンサを埋め込むことで、センサ情報によって装置を監視することができますし、⼈⼒作業をロボットに置き換えることで情報を発信するようになります。⼈にウェアラブルをつけても情報を発信するようになりますね。
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②のための管理シェル

管理シェルとは、コンポーネントの上に被せてコンポーネントの情報を整えたり、コンポーネント間のコミュニケーションをしたりする機能のことです。

  • 個々の機器からのデータをIndustrie4.0仕様に修正

個々の機器の差異は管理シェルによって平準化・規格化されるため、ネットワーク上では同⼀規格品として⾒えるため、相互に接続可能となります。
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例えば、FANUCのロボットアームも三菱電機のロボットアームも同じものとして扱えるようになります。
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それらIndustrie4.0コンポーネント同⼠は管理シェルをインターフェースとして接続可能になります。
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管理シェルの実態は、ゲートウェイかもしれませんし、ソフトウェアかもしれません。組み込みデバイスかもしれませんし、後付デバイスかもしれません。センサ込かもしれませんし、データ変換のみかもしれません。マネージャーかもしれませんし、社⻑かもしれません。
現時点ではそういう感じのものという概念で、⽴場や状況によって解釈や実現⽅法は変わると思います。

ちなみに、モジュール型のアーキテクチャになった場合、各コンポーネントは管理シェルが管理できない動きを許容されなくなるはずなので、管理シェルにぶら下がるハードウェアや組織などは独⾃の特徴を出すことができなくなる可能性がありますね。

モジュール化するための⼿段としての管理シェル、なんとなく雰囲気伝わりましたでしょうか?

デジタルツインとは?

このツインとは双⼦という意味のツインです。装置等の現実世界のコンポーネントをデジタル世界で再現しようということです。
世の中でシミュレーションはたくさんやられていますし、近年流⾏りの機械学習で予測モデルを⽴ててもいいでしょう。⼿段はどうあれ現実世界のコンポーネントをデジタルで再現します。

GEのエンジンの写真なんかは見たことがある人もいるでしょう。
あるいは、モーションキャプチャでディスプレイの中の棒人間がリアルな人と同じ動きをしているのもデジタルツインと言っていいでしょう。
視覚的な表現だけでなく、現実で起こっていることが表されているならグラフでも表でもなんでもいいと思います。(画像も座標とRGBの多次元ベクトルという数字で表現もできますしね。)

ここまでをまとめると、

  • 管理シェルはコンポーネントをモジュール化しネットワークに接続するためのもの
  • デジタルツインは現実世界の各コンポーネントをデジタルで再現するためのもの

このコンポーネントのモジュール化とデジタルツインが組み合わさると、ちょっと⾯⽩い世の中が想像できるようになります。

参考図書

技術を強みに事業を展開するために知っておくべき事実。競争力は技術力も込みの総合的な力で決まる。

技術力を強みに事業展開するための代表的な戦術。

プラットフォーム企業と呼ばれる超大手企業がとっている戦略を科学的に論考。

Industrie 4.0 調べてみた その4 〜国際斜形分業モデル〜

概要

モジュール型アーキテクチャが描けたら、「⾼付加価値モジュール」
「低付加価値モジュール」を定義しよう!
「⾼付加価値モジュール」は⾃社で押さえよう!
「低付加価値モジュール」は低コストで誰かに⽣産してもらう仕掛けを⽤意しよう!
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こんにちは。
前回は、パソコンのアーキテクチャをモジュール化して、各モジュール内で競争を起こせば性能は上がるし、モジュール単価は下がるしで、結果的に⾼性能な製品が安く⼊⼿できてユーザーがハッピー、まで話をしました。
でもそれじゃあモジュールメーカーがハッピーじゃない!ということでグローバル斜形分業が出てきます。

グローバル斜形分業

グローバル斜形分業の肝は、

製品アーキテクチャの中に付加価値の低い領域を作って、そこを新興国にやらせようぜ!

です。
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前述したようにPCアーキテクチャインテル主導の中間⾼速バス⽅式に移⾏しました。
ちなみに新しいPCアーキテクチャを部品メーカーが主導したというのはすごいことですよね。
そして、新しいバス⽅式の普及に重要な働きをしたのが台湾企業です。
台湾企業がインテルチップセットを搭載したマザーボードを⼤量に⽣産し市場に供給しました。
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さらにインテルは、リファレンスデザインという、PCのお⼿本のようなものを販売することで、PCアセンブリメーカーの参⼊障壁を下げる仕掛けも⽤意しました。
当時新興PCアセンブリメーカーだったDellGatewayは、このインテルチップセットが載ったマザーボード台湾から買い、CPUとリファレンスデザインをインテルから買い、PCを組み⽴てることでインテルインサイドなPCを普及させていきました。
この時のインテルのビジネスモデルは、
①安価なチップセットを台湾メーカーに供給することで市場を拡⼤し、
②⾼価なCPUを先進国のPCアセンブリメーカーに供給することで利益を得る、
という2⾯市場戦略です。
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さらにインテルマザーボードの標準規格(ATX規格)も策定し、台湾企業が安⼼して設備投資できる状況を整えました
台湾企業としてもインテルの標準に乗っかっるかどうかは経営判断ですからね。標準技術を公開することで新規参⼊企業の技術的な不安を低減したものと思います。
結果論としては、台湾メーカーも規格品の⼤量供給という競争ルールの変化に対応し、⼤きく成⻑しました。
インテルと台湾企業の間でWIN-WINの関係が構築されています。

このように、モジュール型のアーキテクチャ(中間⾼速バス⽅式)を創造し、
⾼付加価値モジュール(CPU)を⾃社で供給し、
その他の低付加価値モジュール(マザーボードやHDDなど)を新興国に供給させることで、
最終製品の低価格化と⾃社の利益というトレードオフを解消しました。
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CPUの価格が⽐較的⾼⽌まりしているのに対し、最終製品であるPCや代表的な部品であるHDDの価格は右肩下がりですね。
PCアセンブリの代表企業だったIBMはご存じのとおり、すでにPC事業から撤退しています。
ハッピーになった⼈(インテルや台湾マザーボードメーカー)がいれば、そんなにハッピーにならなかったりアンハッピーになった⼈(IBM、その他モジュールメーカーなど)もいます。
みんながみんなハッピーにはなりませんね。

⾼付加価値領域と低付加価値領域の組み合わせで製品アーキテクチャを設計し、
⾼付加価値領域を⾃社でクローズし、低付加価値領域を新興国に任せるという、
グローバル斜形分業が⼤事
という話でした。

個⼈的な感想ですが、⼀部品メーカーが最終製品の新規構造という価値を⽣み出し、さらにそれを直接売るのではなく、撒き餌にして競争優位性を⽣み出したという事実に驚愕しました。(逆にそうしないと低付加価値モジュール側に追いやられる?)
モジュール内で競争するのでなく、⾃社モジュールがOnly Oneになるアーキテクチャを普及させる。できるものなら参考にしたいです。

グローバル斜形分業については下記書籍を参照ください。

Industrie 4.0 調べてみた その3 〜PCビジネスモデルの歴史〜

概要

初期のPCは摺合せ製品でした。
⾼速I/O、と低速I/Oがモジュール化して、PCの進化が加速!
⾼速I/Oの中⾝もモジュール構造になってPCが世界中に普及!
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こんにちは。
前回はIndustrie4.0の概要を紹介しました。
⽬指す姿もメリットも産業構造の整理も、まぁ、概念としてはわかるよ。で??
という感じでもやっとした⽅も多いのではないでしょうか。
公開されている資料を転載しただけだとこの程度ですが、ほかの情報と合わせて考察するといろいろ⾯⽩い発⾒がありますので、⼀緒に⾒ていきましょう。
今回は、Industrie4.0でもかなり意識されているでろう、PCのビジネスモデルについてです。

モジュール化によるビジネスモデル⾰新

www.jstage.jst.go.jp

PCは、CPU、メモリ、HDD、周辺デバイス(マウス、キーボードなど)からできていて、それらが上⼿に連携するから正常に動作します。
上⼿に連携させることは難しいことで、それを摺合せで実現し競争⼒にするアセンブリ企業や、その難易度を低下させるアーキテクチャを作り⾃社のポジションを獲得する部品企業など、いろいろな企業の戦略が出てくるため、ビジネスモデルの⾯⽩い教材だと思います。

PCのビジネスモデルの歴史は、垂直統合的だったモノづくりが、次々とモジュール化され、グローバル斜形分業に変化するものです。

PC業界の⽣態系は垂直統合型からモジュール型へ変化

初期のPCはIBM垂直統合的に作っていました。それがモジュール型へと変化していきます。
以下にその変遷の図を⽰します。
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図左のバスバッファ⽅式では、CPUを最適に扱うためのBIOS(ソフト)をクローズド領域として、BIOSへのインターフェースを周辺デバイスベンダーに公開し、サードパーティを呼び込みました。
サードパーティは周辺デバイスIBMが公開するBIOSで正常に動くようにしっかり摺合せます。
なので他社の互換BIOSや別バージョンのBIOSだと使えなくなったりします。
IBM以外のPCアセンブリメーカーは、最新CPUを導⼊してもそれに対応したBIOSがないため周辺デバイスが利⽤できず、⾼性能PCを作ることができませんでした。
PCの進化はBIOSに強烈に⽀配されることになりました。
IBMがすり合わせているのかサードパーティがすり合わせているのかわかりませんが、初期のPCは摺合せ製品でした。

次に出てくるのが、図右のバスブリッジ⽅式です。
内部にバスブリッジを置き、CPUやメモリなどからなる⾼速I/O領域(及びBIOS?)と、周辺デバイスからなる低速I/O領域を分離しました。
これによりCPUとメモリや⾼速I/Oとの摺合せは依然として必要なものの、低速I/Oで接続される周辺デバイスとの摺合せが不要となり、PCアセンブリメーカーの負担は⼩さくなりました。
⾼速I/O領域と低速I/O領域というモジュールの組み合わせでPCを作れるようになったともいえます。
これでIBM以外のPCアセンブリメーカーがベンダーから⾼性能なCPUなどの部品を買って、PCを進化させることができるようになりました。
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次が、インテルが主導した中間⾼速バス⽅式です。
今度はCPUからメモリとGPUを分離しモジュール化しました。
IBMのバスバッファ⽅式と⽐べると、ブリッジが増えた代わりに摺合せ要素が少なくなってきたことがわかります。
各部品メーカーは直近のインターフェースへの接続だけ気にすれば製品を作れますし、PCアセンブリメーカーは部品メーカーから⾼性能な部品を買って組み合わせればハイエンドからローエンドまで所望の製品を作ることができます。

モジュール化が進むことで各部品で競争が始まり、最終製品の性能はどんどん上がっていきます
また、部品価格は下がり、PCのトータルコストも下がり、多くのユーザーにPCがいきわたり、ユーザーはハッピーになります。

ところで、部品メーカーは単価が⾼いほうがハッピーなのですが、
部品価格が⾼⽌まりしたらPCのトータルコストは下がりません
そうするとユーザーはハッピーじゃないですね。
このトレードオフへの解がグローバル斜形分業です。

参考図書

技術を強みに事業を展開するために知っておくべき事実。競争力は技術力も込みの総合的な力で決まる。

技術力を強みに事業展開するための代表的な戦術。

プラットフォーム企業と呼ばれる超大手企業がとっている戦略を科学的に論考。

Industrie 4.0 調べてみた その2

概要

ドイツIndustrie4.0についてご紹介。
企業の壁を越えて垂直⽔平統合したらメリットいっぱい!
製造業のモジュール化を⽬指すよ!
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こんにちは。
前回は、各国で将来のあるべき製造業の姿について議論が始まったよ、という話をしました。
今回は、Industrie4.0を掲げるドイツがどのような構想を描いているかについてご紹介します。

Industrie 4.0の概要(参考

Industrie 4.0はスマートグリッドスマートホーム、スマートヘルスケア、スマートモビリティなどと並列に位置する、スマートインダストリとでもいうべき思想です。
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1. こうなったらいいな:スマートなネットワーク化された世界

  • 価値ネットワークを通じた⽔平統合
  • バリューチェーンを横断するエンジニアリングのエンドtoエンドのデジタル統合(データフォーマットが統⼀されているようなイメージ)
  • 垂直統合とネットワーク化された製造システム

それぞれ⾔葉を⾜してみると、

  • 現在垂直統合的にすり合わされている⽣産⼯程をモジュール化し、各モジュールを得意企業が担当(⽔平統合)、
  • かつモジュール間の連携を端から端まで統⼀されたデータフォーマットで管理(エンドtoエンドのデジタル統合)し、
  • 各モジュール間をネットワークに接続することで垂直統合的に製造することができる(垂直統合)、

新しい製造業を⽬指す。

結局、何⾔ってるかよくわからなかったと思います。
この段階ではいかようにも解釈できる抽象的な話をしているのでよくわからないのが正解で、各⼈がどのような具体像を描くかが⼤切だと思います。

私の理解では、製造プロセスのP2Pです。
どんなうれしいことがあるかというと、

  • マスカスタマイゼーション(カスタム商品もマス商品並みのコストで⽣産できる)
  • 製造プロセスの透明化による適切な意思決定を実現
  • 中⼩企業、スタートアップ企業にも下流のサービスビジネスを実施する機会
  • ルーティン業務からの解放
  • 資源⽣産性と資源効率性の向上
  • ⾼齢労働者の労働寿命の延⻑し⽣産的でいられる時間を延ばす

などなど。これも、具体像が不明確なのでなんでも⾔えるという感じです。
みなさんの気になる効⽤はありましたか?
私からは、今回の連載のアウトプットとして、太字に関わる将来像を⼀つ提⽰したいと思ってます。

2. 実現⽅針を決める:8つの活動⽅針

  • 複雑なシステムの管理
  • ブロードバンドインフラ
  • 安全とセキュリティ
  • 業務組織と業務設計
  • 研修と専⾨家の育成
  • 法律

中でもまず議論しなくてはならないのがリファレンスアーキテクチャです。
リファレンスデザインとは、「将来の産業構造をこうしよう」という⻘写真です。

リファレンスアーキテクチャ RAMI 4.0(参考1参考2

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RAMI 4.0は製造業を3つの軸で区切ってモジュール化しています。

  • 階層

わかりやすくするために、現状のヒエラルキーを以下に⽰します。
ヒエラルキーは最上位に企業を置いた従属関係を⽰します。
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最上位に会社(Enterprise)があり、
会社の下部組織に部署(Work Centers)があり、
部署内にいろいろな作業場(Station)があり、
作業場には制御機器(Control Device)があり、
制御機器に制御されるバイス(Field Device)があり、
バイスによって製品(Product)が製造される。


次にIndustrie 4.0が⽬指す、いずれはこうなる!というヒエラルキーを⽰します。
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現状のヒエラルキーに存在する、Enterprise, Work Centers, Station, Control Device, Field
Device, Productが並列にSmart Factoryに帰属し、それぞれがConnected Worldに接続されます。
会社とか現場というような分類は残るものの、現場とつながるためにまず会社とつながる必要があるような階層構造はなくなっています。
もはやヒエラルキーってなんだっけ?というくらい⾃由度の⾼い構造ですね。


階層について。
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  • Asset:現実世界のモノ
  • Integration:現実世界とデジタル世界の変換。このあたりにデジタルツインという思想が⼊ってきます。
  • Communication:情報へのアクセス。インターネットのようなものということでいいと思います。Asset同⼠が接続し、情報のやりとりをすることを担保するために、管理シェルという概念を導⼊しています。
  • Information:情報。
  • Functional:Assetが持つ機能。
  • Business:組織とビジネスプロセス(組織作り・運営とかビジネスモデルとかの話ですかね?)

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企画/試作/設計/製造/使⽤/メンテ/廃棄
といった⼀連の流れを⾔います。


このように、産業構造をいろいろな⾓度から整理し、モジュール化するようなことをしています。
みなさんの部場、現場はどのようなモジュールで、そのモジュールがつながっている先(サプライヤー、顧客など)はどのモジュールでしょうか。
(MY Labは、ヒエラルキー軸のWork center, 階層軸のIntegration, Communication,
Business、ライフサイクル軸の企画の交わる領域のモジュールといったところですかね。)
いったいなぜこのようなモジュール化を⽬指しているのでしょうか?
これはPCなど半導体産業で起こったモジュール化によるビジネスモデル⾰新に強く影響を受けているように感じます。
ということで、次回はPC業界のビジネスモデルの変遷についてです。

Industrie 4.0調べてみた その1

こんにちは。
みなさん、インダストリー4.0ってご存知ですか?え、古い?

その通りで、数年前にすごく流行って、特に世の中あんまり変わらなかったなーという感じでブームが過ぎましたが、この件は数年置きにブームが再燃すると思っているので以前調べた内容を改めてまとめてみます。

Industrie4.0が⽬指すのは

製造業エコシステム と 先進国のビジネスモデルの⼤変⾰

⇒⾯⽩い!

ということでぜひ皆さんにも知っていただきたい、議論してみたいと思い、記事を書きます。

第四次産業⾰命は⽣産技術が主役の⾰命なので(プロダクトの⾰命ではない!)

⽣産技術系の⽅もぜひ読んでみてください。

分量が多くなりそうなので何回かに分けて投稿します。

今回は導⼊として、世の中の動きをざっくり紹介します。

 

産業⾰命の歴史

  1. 蒸気機関の発明⇒第⼀次産業⾰命。⼈間が動⼒を獲得しました。
  2. 電気の発明⇒第⼆次産業⾰命。動⼒に⾰新が起こりました。
  3. インターネットの発明⇒第三次産業⾰命。⾃動化が進みました。
  4. AI, IoT, ロボットの発明⇒第四次産業⾰命?より⾼度に⾃動化?⾃律化?

以降、各国で模索しているIndustrie4.0のような活動の総称を第四次産業⾰命、その中のドイツの活動のことをIndustrie4.0と区別します。

 

第四次産業⾰命って?

AI, IoT, ロボット技術がコスト含めて成熟してきたので、これらを融合したらそろそろ⼤きな絵が具体的に描けるんじゃない?ということで各国が産業の⼤変⾰の絵を描き始めています。

絵を描く⼿順としては、各国とも以下のように進んでいるようです。

1.こうなったらいいなという夢を描く※
  例:Industrie 4.0(ドイツ), Society 5.0(⽇本), Industrial Internet (GE)
2.夢の実現⽅針を考える
  例:リファレンスアーキテクチャ(RAMI 4.0, IIRA, IVRA)
3.実現⽅法を具体化する

※夢にもモデルケースがあるかもしれません。GEのIIは、⾃社で成功したビジネスモデルをいろいろな業種に横展開しようとしたら、結果的に第四次産業⾰命のような取組になった気がします。

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↑各国のリファレンスモデル。ここでいうリファレンスモデルには抽象度に幅がありますが、産業構造を表した概念図(Canvas)だったり、ある特定の製品・技術標準の構造(Function,Data)などのことです。

Industrie4.0には、これまで特定の領域で具体的な機能とデータの標準がいろいろ作られてきたのを改めて統⼀する意図もあるようで、そのためにドイツやGE、中国、⽇本も超上位概念のCanvasを作成しています。

要するに、これからの製造業界のあるべき姿、特にIoT、ロボット、AI技術を取り込んだ製造業の姿を議論し始めているということです。
次回以降では、ドイツやアメリカのIoTの取組の事例を紹介し、それらの動きから読み取れる将来の製造業の姿について考察します。

 

第⼆回 ドイツのIndustrie4.0 リファレンスアーキテクチャについて

第三回 PCアーキテクチャのモジュール化の歴史

第四回 モジュール型アーキテクチャから⾼付加価値製品を⽣み出すビジネスモデル

第五回 ドイツのIndustrie4.0 管理シェルによるモジュール型製造業の実現

第六回 デジタルツインと管理シェルで実現されること

第七回 GEのIoTを活⽤したビジネスモデル

第⼋回 上記調査から⾒えてきたIndustrie4.0が⽬指す製造業の姿

 

参考文献

http://ssfj.jp/industrie-4-0

https://www.zvei.org/en/press-media/publications/gma-status-report-reference-archtitecture-model-industrie-40-rami-40/

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/chitekishisan/2016/03/cs20160307.pdf

https://www.ge.com/docs/chapters/Industrial_Internet.pdf

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1045_02_02.pdf

【未経験からの戦略コンサルタント転職】メーカーからの転職組から見えたコンサルティングファーム情報

こんにちは。お盆休みで電車が激空いてます。一年中お盆休みになってほしい。
さて、今回は転職活動で集めたコンサル業界の情報をまとめます。

※2019年4月までの情報です。

※コンサルという仕事の平均値や代表例を探してみましたが、成果主義と上司のさじ加減が強烈とのことで、誰も明快な答えをくれませんでした。なので、自分もそうでしたが、情報がなくて不安な人は情報不足による不安が解消されることはないので以下の情報を平均値として一旦信じちゃったほうが気持ちよく転職活動できます

仕事内容
  • 情報収集

基本的にアソシエイト、コンサルタントの仕事。
ネットサーフィン、電話、面談、実地調査、アンケート、聞き込みなど、手段は問わない。社内に詳しい人がめっちゃいるのでまずはその人に聞くらしい。

  • エクセル

アソシエイト、コンサルタントの仕事。
データ整理、表作成を超高速にやる。ショートカットキー使いこなせないと仕事終わらないレベルで仕事降ってくる。入社初期はエクセルの使い方を徹底的に鍛えられるらしい。友人曰く、コンサルタントはエクセルという競技のアスリート。

みんなやる。コンサルがコンサルたる所以はここにあるらしい。ショートカットキー使いこなせないと仕事終わらない。
官公庁のHP行くとコンサルや総研の作った報告書が参照できる。
KRIC関連報告書(近畿経済産業局)
クールジャパン/クリエイティブ産業(METI/経済産業省)
これらは戦略ではなく調査案件ですが、仕事のスピード感としてはこんな感じの資料を3週間/人で作り上げるくらいらしいです。

  • 成果物の仮説構築

基本的にマネージャーの仕事。
お客さんに忖度することもあれば、絶対こうすべき!という強い主張をすることもあるらしい。

  • お客さんへのプレゼン

パートナー、マネージャーの仕事。
これはお客さんだったこともあるのでなんとなくわかるが、エビデンスベースでロジカルに淀みなく話す感じ。質問への典型的な切り返しや逃げ口上があるらしく、それをマスターするまで客先に立てない。

  • 営業

マネージャー以上は個人でお客さん持ってる感じ。ある人が言うには、コンサルタントって芸人みたいなもので、その芸風が好きな固定客がつくようにならないとダメ、とのこと。上司から担当客割り当てられることもあれば、自分で0からネットワーク作ってお客をゲットすることもある。

メーカーから転職してパートナーになった人が言っていたが、実業に自分が貢献している、動かしているというドライブ感(手触り感)はビックリするくらいない無いらしい。

ポジション

アソシエイト < コンサルタント < マネージャー <<越えられない壁<< パートナー
どこもだいたいこんな感じ。

  • アソシエイト:

上司の超絶優秀な手足。データ収集、パワポ作りがメインタスク。言われたことをロジカルに超高速にこなすことが求められる一方、あくまでロジックが全てなのでクリエイティビティを発揮する場面は少ないらしい。

マネージャーが構想する成果物の現物を作る人。パワポのクオリティを担保する人。お客さんとのやり取りはほぼない。

  • マネージャー

成果物の責任者。お客さんとのすり合わせ、成果物の仮説構築、部下へのアサイン、部下の指導など全部やる。最低でもこのポジションまでたどり着かないとコンサルの醍醐味が味わえないらしい。

  • パートナー

営業マン。大企業の役員(少なく見積もって1万人に1人の逸材)に対して数千万から数億円の商品を年間何件も売りつける人といえば仕事の難易度が伝わるだろうか。

勤務時間目安
  • 戦略コンサル

平均9-23時。平日一生懸命働けば土日は仕事しなくてもいいかもしれないらしい。
働き方改革でかなり仕事が楽になったらしい。

  • 総合系コンサル

平均9-21時。

住居

会社からdoor2doorで30分以内必須。

年収レンジ

アソシエイト: 600-900
コンサルタント: 900-1500
マネージャー:1500-3000
パートナー: 3000から

転職者は直近の源泉徴収額前後を提示されることが多いらしい。初年から高級取りにはなれない。

福利厚生

PC支給。通勤手当
家賃補助や退職金があるところもあるが大したことない。
大手メーカーに比べるとないに等しい。

Uo or Out

各ポジションを3年で進学する。飛び級あり。留年は2回くらいまで。留年が続くと中退(卒業)となる。だいたいどこのファームもこんな感じ。
会社によっては留年に寛容なところもあるが、四半期ごとに中間レビューやって中退を言い渡されるところもあるらしい。

卒業後の進路

別のコンサル、中小企業やベンチャー企業の役員、外資、起業、投資銀行プライベートエクイティなど。
会社の規模やブランドより、年収維持できるかどうかで進路を決めるらしい。戦略コンサルタントといえど奥さんの生活水準下げたくない!って圧力には屈するらしい。
少なくとも、再就職に困る人はあまりいない。
サラリーマン社長の大企業では内規遵守が徹底されているので、給与規定のためにコンサルで活躍した人に見合う給料を出せない。コンサルに億円単位で発注は出せるけど数千万で正社員として雇うことはできない。

転職事情

よい。すこぶるよい。今がチャンスらしい。
未経験者は年齢で切られることもある。

コンサルファームの中の人

少なくともマネージャー以上は仕事を楽しんでいる風な人が多い。
コンサルタント以下は自分を殺してる感じの人もちらほら。
頭の回転と理解力は半端無い。思考とトークが早いので話しているだけで鍛えられる(疲れる)。

まとめ
  • 結果出せれば給料はメーカーよりはいい。
  • 仕事的に成長できそう感がある。
  • 若いほど旨味なので30歳未満でコンサルに興味ある人は迷わずGo。(30歳半ばにもなると現職に残るほうがうまいかも。)

【未経験からの戦略コンサルタント転職】コンサル転職に向けた情報収集

こんにちは。今回は情報収集です。
 大手で新規○○の仕事やるの無理じゃね?
→次の仕事何しようかな?
→具体的にどんな仕事があるかな?←今ここ

都内勤務&年収1000万とか考えたら、コンサルと外資銀行くらいしか思い付かない。金融なんて自分にできる気がしないので第一志望コンサルで動き始めます。あと、化学メーカーは現職以上にいいところないだろうという仮説のもと探さない。

転職した知り合いに相談

転職活動なんてどう始めたらいいかわからないのでとりあえず知り合いに相談。コンサルやってる友人と、現職を一年前に辞めた先輩、転職したという高校大学友人に話を聞きにいきました。

ヒアリング要点

  • コンサル友人 ⇒業界狭いから選択肢なんてほぼなくて、やりたいことを喋って雇ってくれるところに行った。職務経歴書くれたら上司に紹介するぜ!
  • 現職転職先輩 ⇒LinkedInでダイレクトにオファーが来て、たまたま興味ある仕事だったから試しに話聞いてたら転職することになった。
  • 嫁 ⇒リクルートエージェントでいいんじゃない?担当者の当たり外れ大きいけど。

ということで、2/5が利用したビズリーチと、定番のリクルートエージェントやってみよう。

ビズリーチ
40%の求職者が使うプラットフォーム。自分の経歴を登録すると転職エージェントや企業人事から連絡が来る。引っ越し一括見積りサイトみたいな感じ。
www.bizreach.jp

リクルートエージェント
担当エージェントが1人ついていろいろ案件紹介してくれる。伴走型。
www.r-agent.com

ビズリーチに登録したらいろんなエージェントから連絡来たので、電話含めていろんな人に話を聞いてみることにしました。

  • アポイントとったエージェント一覧

ムービンストラテジックキャリア
インフォエックス
JACリクルートメント
タリスマン
クライスアンドカンパニー
JBA HRソリューション
ケンブリッジリサーチインスティチュート
for Startups

転職エージェントと面談

コンサル特化最大手エージェントらしい会社。イケイケの兄ちゃんが担当。初回の面談でコンサル業界の給与体系、勤務時間などを教えてくれ、転職時期から逆算した応募スケジュールと応募企業の選定を一緒にしてもらった。
年収1000万欲しい⇒外資戦略コンサルと外資総合コンサル。片っ端から受ければよい。
英語苦手⇒Mac、ベイン、ATKは選考に英語があるので除外。
業務内容の違い⇒プロジェクト次第なのでどこもあまり変わらないといえば変わらない。
応募後になるが、面接の練習もしてくれるというのはとても魅力的。

  • インフォエックス

東大の前に事務所を構えるコンサル特化のエージェント。担当していただいた方はバックグラウンドが理系だそうでエンジニアとしてはとても話しやすかったです。
ここでもコンサルの年収、仕事内容、各ファームの違いなどをヒアリング。
英語苦手⇒あまり関係ないので片っ端から受けるといい。面接まで時間あるのでそれまでに話せるようになれば問題ない。コンサル目指すからにはそれくらいやってのけて。
www.infoex.co.jp

高年収に強みのあるエージェントらしい。
ここではバックグラウンドを活かして転職することを強く勧められた。なので紹介されたのは外資化学メーカー。化学メーカーに転職する気はなかったけど興味本位で数社応募してみることに。
www.jac-recruitment.jp

電話で面談。

  • クライスアンドカンパニー

コンサル、ポストコンサル転職に強いらしいエージェント。電話で面談。経歴を見て素材系ベンチャーの求人を紹介してくれた。化学メーカーに転職する気はなかったけど興味本位で応募してみることに。それ以外にもコンサルについていろいろ質問。30歳オーバーと高齢なこともあり、コンサルで働く覚悟を強く持っていない限りあまりお勧めしないなど、割と率直な意見をくれた。全く採用されないわけではないので試しに受けてみるのはいいと思うみたいな感じ。
www.kandc.com

  • JBA HRソリューション

電話で面談。担当者の電話コミュ力がはんぱなかった。メーカー勤務だからかシグマクシスをすごくお勧めされた。担当者のトーク力に感動したので応募してみようと思ったけど結局時間がなかった。
www.jbagroup.co.jp

老舗の転職エージェント。ベンチャーキャピタルの案件を紹介してくれた。投資よくわかりませんが興味あるので受けてみたいと言ったら、めっちゃ勉強して覚悟見せないと選考通らないぞと口を酸っぱくして忠告された。わざわざ最寄り駅まで面談に来てくれたりVCの参考図書を紹介してくれたり面接の対策を練ってくれたりとかなり丁寧に対応してもらえた。ありがたい。
cambridge-research.jp

  • for Startups

スタートアップへの転職あっせんをしている。あっせんだけでなく、企業支援やスタートアップイベントの運営なんかもしているらしい。電話で面談。スタートアップっぽいイケイケ感のある話し方。
スタートアップで働くことのアップサイド⇒一般的には大手より待遇は悪い。ストックオプションで大儲けする可能性も0ではないが、ストックオプション目当てでスタートアップに転職するのはあまりお勧めしないと言われる。
forstartups.com

T・Yパートナーズ
電話面談。年齢が高いのと未経験なのでコンサル転職は難しいのではという見解をもらった。
自分のスペックのどこを売り込んだらウケがいいと思うか?⇒学歴(10年前なので訴求力がどれだけあるかわからないが)。
www.typartners.com


あと数人個人で転職エージェントやっているような人と話しました。そういう人は個人のつてでもらった案件を紹介してくれる感じですね。

情報収集まとめ
  • コンサルなら都内勤務&年収1000万超え狙えそう
  • コンサルの企業数は多くないので片っ端から応募すればよさげ
  • コンサル面接は特殊なので準備と対策が必要
  • エージェントによっては面接対策など手伝ってくれる

【未経験からの戦略コンサルタント転職】方針設定

こんにちは。今日は転職活動初期の方針設定についてです。
大手で新規○○の仕事やるの無理じゃね?
→次の仕事何しようかな? ←今ここ

お上が設定する制約条件の下でお上が求める成果を出すのは少なくとも自分には無理!なのは確定なので、次は何しようかな?

選択肢を探す前に、次の仕事に求めることなどを明文化します。
・家族を養える仕事
⇒これはお父さんとしての責任。日々食べるに困らないこと、子供二人分の大学卒業までの学費を稼ぐこと、奥さんが働かなくてもなんとかすること、老後資金を作ることが条件。
・福利厚生込みで直近の可処分所得下げない
⇒奥さんからの要望。
・都内、神奈川勤務
⇒第二子が産まれたばっかなのでできるだけ家族や友人の支援の得やすい場所に住まないと誰か死ぬ。
・楽しいと思える仕事
⇒人生の半分は仕事なのでそれがつまらないとかあり得ない。
・現職にはこだわらないけど転職にもこだわらない。
⇒社内就活もしっかりやって総合的に判断する。

まあ、都内で働くなら額面で1000万以上は必須かなとざっくり想定。
100%満たすのは難しいだろうけど、まずは理想を掲げて動き始めました。

大手企業からベンチャーへの転職に至る経緯

要約

・新卒10年目で大手化学メーカーから中小化学メーカーへ転職したよ!

・大手化学メーカーでは新しいことへの挑戦が構造的にできなくなってる気がしてきたよ!

・景気良かったから試しに転職してみたよ!

 

私事ですが、今年の7月に大手化学メーカーから中小化学メーカーに転職しました。

最初の会社でどんな経歴たどっていたかというと、以下のような感じ。

・中央研究所の所長肝いりプロジェクトに配属。

・中央研究所の探索研究チームに異動。共同研究のため大学に出向。

・中央研究所で探索研究テーマの立ち上げ。

・新規事業なんとか部的なところに異動。本社スタッフ的な仕事をこなす。

 

・所長肝いりプロジェクト

とにかく特徴的な技術があって、所長がめっちゃ気に入っていて、なんとか事業化するぞ!ってな感じでやっていた部署に配属されました。

配属されてまず思ったのは、狙っている市場環境と手持ちの技術を見たときに、競合に勝てる気がしない、でした。意識高い系新入社員の私は、勝算はなんなのだ!?とか偉そうに体制批判してました(定量的に体制批判できないのが新人のしょぼいところですね。いやープロとして恥ずかしい。)。批判するなら代替案を出すのは基本。

後になって思うことですが、このプロジェクトを推進してきた方々は本当に実力のある人だったんだなと。自分で同じことをやろうとしてもなかなかできませんでした。

 

・大学へ出向

結果的に、大手化学メーカーにいて一番楽しい時期でした。めちゃめちゃ優秀な上司とあほみたいに予算とりまくる部長に恵まれ、しかも研究テーマは自分で決めていいよと言ってもらえる状況。自由がここに!

(ただ、企業の技術とのコラボで論文書きたい大学の先生と、「外に技術を出したくない」会社の秘密主義との板挟みはかなりきつかったですが。この「外に技術を出したくない」という感覚、化学メーカーは割と持っているっぽいですが、これが結構新しい取り組みへの障害になるなーと今は思います。)

 

・中央研究所で研究テーマ立ち上げ

大手の研究所あるあるらしいですが、前述の研究チームはある日突然解散となりました。アーメン。

残されたメンバーに与えられたミッションは、

「100億円の売り上げ」、

「会社の独自技術による技術的優位性」、

「会社の既存事業とのシナジーがある」

この3つを満たす新規事業を立ち上げなさい!

というもの。実際に探してみての感想としては、

これを3つをANDで持つ研究テーマなんて存在しないよってこと。いやほんとに。こんな無茶ぶりをされている全国の研究所員のみなさん、ごはん食べ行きましょう!

ちなみにこの時期からコンプラがめちゃめちゃ厳しくなりました。残業していると上司・総務・組合から「君が過労で倒れると私の首が飛ぶからお願いだから帰ってくれ」とお願いされるようになりました。じゃあ仕事量減らしてくれ。

 

・新規事業なんとか部的なところ

失われた20年をなんとかせねば!ということで、新しいことにどんどんチャレンジするぞ!という部署に異動しました。ローテーションではなく挙手制度を使ってです。

とにかく新しい取り組み、ということで、「IoT」、「AI」、「デザイン思考」、「アート×サイエンス」、「カーブアウト」、「アイデアソン」、「リーンスタートアップとか、とにかくいろんなことをかじってみました。同じような境遇の本社スタッフの方結構いらっしゃるのでは?ごはん食べ行きましょう!

リーンスタートアップ的な取り組みをしようと上司に企画を出したときに、

「次期中計に載るような期待感が欲しい」、

「うちの強みは何か?」、

「どの事業部がその新規事業を引き取るのか?」

と言われ、要は、「100億円」、「独自技術」、「シナジー」のことを言ってる?という感じでした。

新しい手法を試すけど判断基準が新しくないので実態が何も新しくならない。

 

というような経験を積んだ10年間でした。

大手企業から新規事業が生まれない最大の問題は、経営陣の判断基準が昔から変わらないことにあると思いました。

ただ、これも半分くらいは仕方のないことかなと思うようになりました。

 

100億円の売り上げ

⇒グループ全体の売り上げがすごく大きいので、10億円の新規事業が生まれても売り上げの円グラフには見えてこない。グループにインパクトのある成果を求めると最低でも100億円と言わざるを得ない。実現性があるかどうかは論点に上がることもなく、役員さんはこう言うしかない状況になってしまっているのではないか?

 

独自技術、シナジー

⇒たぶんコンサルが過去事例調べてこれらが共通点としてあったのでしょう。私が独自に調査したときもこれは成功事業の必要条件でした。

 

ということで、大手で新規事業をやろうと思っても、役員さんの口からこれらの制約条件を外すと号令が出ることは期待できず、会社のルールと社員への監視体制がどんどん厳しくなる昨今では下々の人間がアングラで事を進めることも難しい。

構造的に八方ふさがりになっていると思いました。

 

この時、自分の思いとしては、

1.新しい取り組みに挑戦することは楽しい。

2.大手では新しい取り組みはやるだけ無駄。

3.家族が増えたのでお金稼がなきゃ!

4.奥さんが地方生活無理だから都心部の仕事見つけなきゃ!

というのがあったので、次の人生の選択肢を探してみようと思い転職活動を始めました。

 

1.大手の研究所に残ってあがく

2.大手の事業部に配置転換してもらう

3.大手の本社スタッフの座を狙う

4.給料のいい仕事に転職する

5.新しいことができそうな会社を探す

上記の可能性を探していたらたまたま私がやりたいと思っていたような取り組みをオーナー社長の意思として取り組んでいる中小企業と出会い、参加してみることにしました。家族への説明には3か月かかりましたw

自宅で始める電気化学実験:PCの準備

知り合いからの依頼で自宅で電気化学実験をちょっとやることになりました。

大手で働いていた時の感覚だと、「え、自宅でできんの!?会社でやればよくない!?」とついつい思ってしまいますが、自営業は場所・金という資源がないので自宅でやります。結構いろいろできちゃうことに最近びっくりしてます。

 

PCに入れるソフトも基本無料のものを使います。

LTspice

無料の回路シミュレーター。シミュレーションにかけられる部品数無限という驚異。

電気・電子にかかわる仕事をするときはとりあえずインストール。回路図の絵をパワポに貼るレベルから、いろいろ役立ちます。

www.analog.com

 

・KiCAD

プリント基板の設計ツール。EAGLEとかDesignSparkとかCADLUSとかいろいろあるけど、パーソナルユースじゃ大差ないのでこれでOKです。部品のライブラリも結構充実してきているので慣れれば十分使えます。

お金がなくてポテンショスタット買えないので自作するために導入しました。

www.kicad-pcb.org

 

PCは4年前くらいにドスパラで買った20万円くらいのデスクトップ。Deep Learning でも走らせない限り問題なく動きますよ。

はじめに

こんにちは。

大手化学メーカーから素材系ベンチャーへ転職して時間がなんかできたのでブログ始めました!

 

自己紹介するとこんな感じ。

・出身:群馬の田舎のほう

・大学:東京。化学専攻。

・仕事:大手化学メーカーの研究所の平社員。⇒素材系ベンチャーの事業開発担当平社員。

・趣味:テニスとか電子工作とか子育てとか。

・このブログで書くこと:

1.半分趣味で自宅の一室を簡単な実験室にしようとしてるのでその進捗的な話。

2.先日の転職活動のTIPS

3.その他モノ申したいこと

 

どうぞよろしくお願いします。

 

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