のらケミスト

中小化学企業で新規事業とか技術開発している人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

大手企業からベンチャーへの転職に至る経緯

要約

・新卒10年目で大手化学メーカーから中小化学メーカーへ転職したよ!

・大手化学メーカーでは新しいことへの挑戦が構造的にできなくなってる気がしてきたよ!

・景気良かったから試しに転職してみたよ!

 

私事ですが、今年の7月に大手化学メーカーから中小化学メーカーに転職しました。

最初の会社でどんな経歴たどっていたかというと、以下のような感じ。

・中央研究所の所長肝いりプロジェクトに配属。

・中央研究所の探索研究チームに異動。共同研究のため大学に出向。

・中央研究所で探索研究テーマの立ち上げ。

・新規事業なんとか部的なところに異動。本社スタッフ的な仕事をこなす。

 

・所長肝いりプロジェクト

とにかく特徴的な技術があって、所長がめっちゃ気に入っていて、なんとか事業化するぞ!ってな感じでやっていた部署に配属されました。

配属されてまず思ったのは、狙っている市場環境と手持ちの技術を見たときに、競合に勝てる気がしない、でした。意識高い系新入社員の私は、勝算はなんなのだ!?とか偉そうに体制批判してました(定量的に体制批判できないのが新人のしょぼいところですね。いやープロとして恥ずかしい。)。批判するなら代替案を出すのは基本。

後になって思うことですが、このプロジェクトを推進してきた方々は本当に実力のある人だったんだなと。自分で同じことをやろうとしてもなかなかできませんでした。

 

・大学へ出向

結果的に、大手化学メーカーにいて一番楽しい時期でした。めちゃめちゃ優秀な上司とあほみたいに予算とりまくる部長に恵まれ、しかも研究テーマは自分で決めていいよと言ってもらえる状況。自由がここに!

(ただ、企業の技術とのコラボで論文書きたい大学の先生と、「外に技術を出したくない」会社の秘密主義との板挟みはかなりきつかったですが。この「外に技術を出したくない」という感覚、化学メーカーは割と持っているっぽいですが、これが結構新しい取り組みへの障害になるなーと今は思います。)

 

・中央研究所で研究テーマ立ち上げ

大手の研究所あるあるらしいですが、前述の研究チームはある日突然解散となりました。アーメン。

残されたメンバーに与えられたミッションは、

「100億円の売り上げ」、

「会社の独自技術による技術的優位性」、

「会社の既存事業とのシナジーがある」

この3つを満たす新規事業を立ち上げなさい!

というもの。実際に探してみての感想としては、

これを3つをANDで持つ研究テーマなんて存在しないよってこと。いやほんとに。こんな無茶ぶりをされている全国の研究所員のみなさん、ごはん食べ行きましょう!

ちなみにこの時期からコンプラがめちゃめちゃ厳しくなりました。残業していると上司・総務・組合から「君が過労で倒れると私の首が飛ぶからお願いだから帰ってくれ」とお願いされるようになりました。じゃあ仕事量減らしてくれ。

 

・新規事業なんとか部的なところ

失われた20年をなんとかせねば!ということで、新しいことにどんどんチャレンジするぞ!という部署に異動しました。ローテーションではなく挙手制度を使ってです。

とにかく新しい取り組み、ということで、「IoT」、「AI」、「デザイン思考」、「アート×サイエンス」、「カーブアウト」、「アイデアソン」、「リーンスタートアップとか、とにかくいろんなことをかじってみました。同じような境遇の本社スタッフの方結構いらっしゃるのでは?ごはん食べ行きましょう!

リーンスタートアップ的な取り組みをしようと上司に企画を出したときに、

「次期中計に載るような期待感が欲しい」、

「うちの強みは何か?」、

「どの事業部がその新規事業を引き取るのか?」

と言われ、要は、「100億円」、「独自技術」、「シナジー」のことを言ってる?という感じでした。

新しい手法を試すけど判断基準が新しくないので実態が何も新しくならない。

 

というような経験を積んだ10年間でした。

大手企業から新規事業が生まれない最大の問題は、経営陣の判断基準が昔から変わらないことにあると思いました。

ただ、これも半分くらいは仕方のないことかなと思うようになりました。

 

100億円の売り上げ

⇒グループ全体の売り上げがすごく大きいので、10億円の新規事業が生まれても売り上げの円グラフには見えてこない。グループにインパクトのある成果を求めると最低でも100億円と言わざるを得ない。実現性があるかどうかは論点に上がることもなく、役員さんはこう言うしかない状況になってしまっているのではないか?

 

独自技術、シナジー

⇒たぶんコンサルが過去事例調べてこれらが共通点としてあったのでしょう。私が独自に調査したときもこれは成功事業の必要条件でした。

 

ということで、大手で新規事業をやろうと思っても、役員さんの口からこれらの制約条件を外すと号令が出ることは期待できず、会社のルールと社員への監視体制がどんどん厳しくなる昨今では下々の人間がアングラで事を進めることも難しい。

構造的に八方ふさがりになっていると思いました。

 

この時、自分の思いとしては、

1.新しい取り組みに挑戦することは楽しい。

2.大手では新しい取り組みはやるだけ無駄。

3.家族が増えたのでお金稼がなきゃ!

4.奥さんが地方生活無理だから都心部の仕事見つけなきゃ!

というのがあったので、次の人生の選択肢を探してみようと思い転職活動を始めました。

 

1.大手の研究所に残ってあがく

2.大手の事業部に配置転換してもらう

3.大手の本社スタッフの座を狙う

4.給料のいい仕事に転職する

5.新しいことができそうな会社を探す

上記の可能性を探していたらたまたま私がやりたいと思っていたような取り組みをオーナー社長の意思として取り組んでいる中小企業と出会い、参加してみることにしました。家族への説明には3か月かかりましたw