のらケミスト

中小化学企業で新規事業とか技術開発している人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

大企業で好きなことやる方法 ~下積み期間と思ってスキル獲得~【大企業サラリーマンの標準装備】

こんにちは。
大企業で好きなことをやるために、まずは何よりも大事なのは「スキル」です
当然いきなりは好きな仕事にありつけません。大企業だと最低でも2年くらいは下積み的期間が必要という印象。

tamagoyaki1999.hatenablog.com

○○のことなら~~に聞けば何とかなる、と周りの人に思わせる

スキルを身に着ける目的です。
これが大企業内での発言力を身に着ける第一歩となります。

「スキル」とは会社を成り立たせている機能

ここでいう「スキル」は会社を成立させるために必要な機能のことと定義します。
会社というのはスキルの集合体で成り立っています。
大企業を成立させるためには、数多くのスキルを有機的に結び付け連携させる必要があります。
あまりにも事業の規模が大きくなりすぎて1人ではそのスキルを賄いきれないので数万人という従業員数になるのです。
事業を行うために必要なスキル・機能を提供するからその対価として私たちはお給料をもらえます。


貴重な「スキル」を提供できる人材が重宝される

当たり前ですが、会社にとって貴重な「スキル」を提供する人は重宝されます。
重宝されると、プロジェクトに真っ先に組み込まれる、困ったときに頼りにされる、なんかよくわからないことを依頼される、といったチャンスへの遭遇確立がぐっと上がります。
余談ですが、大企業で最も少ないリソースは「機会(チャンス)」です。
人が成長するにはいろいろな経験を積む必要がありますが、大企業にある仕事のほとんどは誰がやっても大丈夫な仕事です。
逆に、誰がやってもいいように設計されているからこそ安定して成長していけるわけです。エースが抜けたら事業が壊滅した、なんてこと許されるわけありません。
たまたま与えられたチャンスで成果を出せると、育成対象として以降継続して機会に恵まれることになります。
貴重なスキルを持った人材は、チャンスへの遭遇確立が高いので育成対象になりやすいです。

「貴重な」スキルとは、社内で調達することが難しいスキル

重宝されるには貴重なスキルを持っていることが必要です。
「貴重」≒「希少」と考えてほぼOKです。
ここですごく大事なことですが、「社内で」希少であればよいです。
世の中に同じことができる人が溢れていようが、そのスキルがその会社に特化し過ぎて他社で一切役に立たなかったとしても、

  • 事業運営に必要で、かつ、
  • 社内で希少

であればよいのです。

上司のニーズは既存社員でチームを組成すること

あなたの上司の気持ちになってみましょう。
何かの専門家がチームに欲しいとき、どうやって探しますか?
いきなり転職エージェントに依頼を出すでしょうか?
人を新規に雇うというのはすごく大変なことです。特に正社員待遇が当然というような能力の高い人間となると、一度雇うと何十年も雇用しなければなりません。
なので、基本的には既に雇っている人から探すということになります。
そのときに上司が欲しがるスキルを持っていることが重要になります。

母数が少ないことに意味がある

2つの大事な事実をご紹介します。
例えば、化学メーカーのある研究所で化学バックグラウンドの研究者2人、AIとかできる人1人、半導体に強い営業1人で新チームを組成しようとします。
部全体の人員構成が、
化学科出身200人、電気電子学科出身20人、情報工学科出身5人、経済学部出身10人、その他65人だったとします。
おそらく、
化学研究者は化学科出身の200人から、
AI人材は情報工学科の5人から、
営業は電気電子と経済学部の30人から探すことになるでしょう。
通常、検討できる人数には限りがあるので、化学系の人で指名検討対象になるのは上位10%くらいの超優秀層くらいで、それ以外は誰でもいいから人くれ、ってなると思います。なので、上位10%に入ってないとチャンスを得るにはラッキー配属を期待することになります。
営業は1/30で確率論としては化学系よりも低いですが、30人くらいだったら候補者全員チェックする可能性があります。本人を見て指名される可能性があるように思います。
AI人材みたいな、どこに行っても引っ張りだこな専門家もいます。化学メーカーだと、ITわかる人いなすぎてpip installできるだけでAI人材と言われるなんて逸話もあるくらいです。
何が言いたいかというと、
希少性さえあれば能力と関係なしに引き揚げられる可能性が高まる
ということです。
同じようなプレーヤーが群がるレッドオーシャンで戦ってはいけないのは、マーケティングでは当たり前でみんなドヤ顔で語りますが、自身のポジショニングは甘かったりする不思議。

もうひとつの大事なことは、お気づきかもしれませんが、その他65人は話題に上らないことです。

  • 事業の運営に必要なスキルであること、
  • そのスキルを持った母集団が小さいこと、

重要です。



どうやって希少性を高めるのか?

人がやらない仕事をやる。
というのが本質ですが、いや、難しい気がしますよね。だって簡単に出来ないから誰もやらないんでしょう?と。
「出来ない」という言葉には3つの解釈があります。

  1. 物理的にできない:神様ができないと決めたことです。エネルギー保存則とかそういうやつです。
  2. 自分にはできない:物理的に否定されていないので他の誰かなら出来るかもしれないけど自分にはその能力がないからできないというものです。プロ野球で年間20勝、20ホームランはとてもできる気がしません。
  3. 出来る出来ない以前にやる気がない、自分のことではない:出来ないの中でこれが一番多いやつです。

これら出来ないをやると一気に希少性が上がります。
狙い目は3番目の誰もやる気がないからやってないことをやるんです。ここは能力が低くてもできることがたくさんある領域です。

誰もやる気がなくてやらないこととは?

教科書で勉強する

これ大人になるとほんと多くの人がやらなくなります。ほとんどの人が30分で内容が理解できる自己啓発本ばっか読むようになります。
それよりも、ノートと鉛筆をわきに高校生の期末テスト勉強のようにじっくり学ぶ必要があるような教科書(専門書)を読みましょう。
例えば昔、有機トランジスタが流行っていたときに希に良くあったことですが、
自社で有機半導体開発、共同研究先でトランジスタ作成、自社で評価、という分担でやっていたときのことで、
先輩:「うちの有機半導体は、行き(オン側に掃引)よりも帰り(オフ側に掃引)の方が移動度が高いんだよ!」
私:「それ、バイアス効果で閾値電圧が測定と同時にずれて電流が減少するから、降圧側でグラフの傾きが大きくなるので移動度が高くなったように見えてるだけです。掃引速度下げるともっと移動度上がると思いますよ。」
先輩:「ほんとだ!すごいね君!大発見じゃん!今度の報告会が楽しみだよ!」
私:「いやいやいや、そうじゃなくて。。。」
こんなものはトランジスタの教科書を読み込んだら理解できることです。でも有機合成屋さんはそれをやらない、物理とか電気にアレルギー持ってる人多かったです。私はそこを教科書を2, 3冊勉強するだけでかなり頼られるようになりました。もともと勉強する気のない人ばかりなので、すぐ横に詳しい人がいるのはとても便利です。

  
  

みんながこぼす愚痴をまじめに解決する

会社のルールとか暗黙の了解に対して、陰で文句は言うけど案外みんな言いなりになってます。
こういう仕事をまじめに解決すると、みんな喜びます。そして、ずっと放置されてきたことが明らかな仕事なので、解決できる人間は希少なことも明確です。以降類似案件の相談がバシバシ来るようになります。
例えば、とある設備の日常点検がルールとしてあったのですが、こんなことはみんなやりたくないのです。点検当番が回ってくるとみんな、めんどくさい、こんなのやる意味がない、なぜなら…と理路整然とやる意味のなさ語り始めるんですが、特になんのアクションもしません。
私は絶対にやりたくなかったからやらなくてよくなるよう多方面への働きかけを始めました。
まずはやらなくていい論理を構築します。コンプライアンス上守らなければならないことはここまで、安全を守るために必要なことはここまででこれ以上の対策は安全向上には寄与しない、そういった論理を作り上げました。
この論理を部の安全委員、研究所の環境安全部、支社の環境安全部、研究所長等へ働きかけます。環境安全部から、他地区ではどうなっているのか?他社はどうなっているのか?専門家の意見は聞いたのか?などなど、この検討を諦めさせるための宿題をもらうのでいちいち他地区の社員、業者に問い合わせて丁寧に対応します。
最終的に研究所長が折れて日常点検を必要最小限に減らすことに成功しました。
この活動でその設備に係る法令に詳しくなったこと、設備につながる用役と建屋の構造に詳しくなったこと、内規を作るためのプロセスを理解したこと、などについて社内で誰より詳しくなりました。
そうなると、設備や内規にかかわる仕事の相談が来るようになります。

仕事を拾いまくる

ちょくちょく降ってわいたように仕事が発生することがあります。それ自体はアサインにはない内容でやったところで評価には直接結びつきません。この手の仕事は人気がありません。が、あえてこれを拾います。
研究所にいると毎年のように古い研究テーマがつぶれて新しいテーマが始まります。そのたびに装置を捨てたり買ったり移管したりが発生します。移管する装置の管理者を誰がやるのか問題が発生します。装置の管理者も基本的には評価されない仕事のため人気がありません。ですがこれをあえて拾います。
見たことも触ったこともない装置もあえて拾っていくと、気づくと研究室の遊休設備を半分以上管理しているような状態になったりします。
そうなると、いろんな人から装置を使いたい、装置が動かない、などといった問い合わせを頻繁に受けます。使いたい人には使い方を指導し、故障したらメンテをする。このようなことをやることで装置についての知識や経験がどんどんたまっていきます。同時に他部署の人が何をやっているか全部わかるようになり、装置以外の知識もどんどんたまります。



希少な人材 ≠ 天才

上記のような能力って、物理的にはやろうと思えば誰でもできることですよね。全然難しくない大したことないことですが、それをやるだけで誰もできない(やろうとしない)ことができる希少な人材になれます。
逆に、例えば化学メーカーで化学で希少人材になるには、10000人に1人というものすごい競争に勝たなければなりません。
一方で上記のような能力だったら数十人に1人というレベルで十分周りから頼られる存在になります。
これが発想の転換です。

目の前にある仕事を拾いまくる

上にあげたのは一例でまだまだ希少な人材になれるスキルはたくさんあります。
そのスキルをどう発見し、身に着けるかですが、一番簡単な指針は、何回も言いますが、
目の前にある仕事を拾いまくる
ことです。
努力する前に社内を調査して、社内にはこのスキルが足りてないことがわかったからそれをやる、というスタンスは結果的に遠回りになる印象です。
まずは考える前に目の前の仕事を拾いまくって、方向性なくてもいいのでとにかく知識経験を蓄えましょう。
これは大企業で好きなことをやるための下積み期間です。

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