のらケミスト

中小化学企業で新規事業とか技術開発している人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

フッ化水素酸ってやっぱり危ないよね【化学企業の現場】

こんにちは。
フッ酸やべー!は化学やってる人にとっては常識ですが、どうやばいかは実は曖昧だったりします。
フッ酸のやばさをざっくりご紹介。

ヤバいとは?

ハザードをえげつなさと、その発生確率の掛け算がヤバさです。リスクとも言います。
えげつない事故も発生確率がほぼゼロなら大してヤバくないということになります。
多くの生物を絶滅させるような巨大隕石も数億年に一度しか降ってこないならリスクはほぼゼロなので誰も怖がらないですよね。

  1. 酸としてヤバい?
  2. 反応性がヤバい
  3. 浸透力がヤバい
  4. 総合力としてヤバい

酸としてヤバい?

フッ化水素のpKaは3.17です。pKaというのは酸の強さの指標で、小さいほど強い酸です。
塩酸:-8.0
硫酸:-3.0

誰もが知っている強酸の代表格、塩酸と硫酸はマイナスの値です。さすがです。
クエン酸:2.87
酢酸:4.76
フッ化水素の酸としての強さは実はクエン酸と酢酸の間くらいなんですね。希薄なフッ酸は酸としてはそこまで強烈なものではないです。

反応性がヤバい

フッ素イオンの反応性が高いです。
電気陰性度が高いので、他の原子の電子をとにかく引っ張ります。
この反応性は当然人体にも作用し、毒となるのです。

では、毒性をwikipediaで調べてみましょう。

ヒトの経口最小致死量は 1.5 g、あるいは体重あたり 20 mg/kg である。スプーン一杯の9%溶液の誤飲で死亡した事例もある[12]。吸引すると、灼熱感、咳、めまい、頭痛、息苦しさ、吐き気、息切れ、咽頭痛、嘔吐などの症状が現われる。また、目に入った場合は発赤、痛み、重度の熱傷を起こす。皮膚に接触すると、体内に容易に浸透する。フッ化水素は体内のカルシウムイオンと結合してフッ化カルシウムを生じさせる反応を起こすので、骨を侵す。濃度の薄いフッ化水素酸が付着すると、数時間後にうずくような痛みに襲われるが、これは生じたフッ化カルシウム結晶の刺激によるものである。また、浴びた量が多いと死に至る。これは血液中のカルシウムイオンがフッ化水素によって急速に消費されるために、血中カルシウム濃度が低下し、しばしば重篤な低カルシウム血症を引き起こすためである[13]。この場合、意識は明晰なまま、心室細動を起こし死亡する[14]。(出典:wikipedia

体に取り込まれたら少なくとも痛い、そしてまぁまぁ簡単に死にます。
体内のカルシウムがやられます。

浸透力がヤバい

フッ化水素はサイズの小さい分子です。
ゴム手袋も皮膚も筋肉も簡単に通り抜けます。皮膚に付着するだけで危ないと言われる所以です。
保護具としては、ネオプレン手袋が推奨されることが多いようです。ニトリルだと不適切。

 

総合力ヤバい

上記のように、高い毒性を秘め、高い浸透性からその毒性が容易に発揮されます。
フッ化水素は皮膚を軽く通過し、血管に入れば血中のカルシウムと結合し低カルシウム血症を起こし、骨に入れば骨の中にフッ化カルシウム結晶を作り痛みを引き起こします。
よって、フッ化水素接触した場合、ヤバいハザードが高い確率で発生するため、総合力としてかなりヤバい薬品です。

そして、実はそこそこ身近に存在しうる薬品で、リチウムイオン電池を分解すると発生します(電解質がフッ素系の場合)。
リチウムイオン電池が発火した!なんてニュースたまに見かけますが、目の前で発火したりガスが噴出していたら全力で逃げましょう。


余談ですが、私はリスクという言葉がすごく嫌いです。
リスクというとマイナス要素の合計みたいななんかネガティブなイメージありません?
本来プラス要素も含めたトータルの期待値を計算すべきだと思うんだけど。
なので、普段は極力リスクではなく期待値という言葉を使うようにしています。


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