のらケミスト

大手化学メーカーから素材系ベンチャーに転職した人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

Industrie 4.0 調べてみた その4 〜国際斜形分業モデル〜

概要

モジュール型アーキテクチャが描けたら、「⾼付加価値モジュール」
「低付加価値モジュール」を定義しよう!
「⾼付加価値モジュール」は⾃社で押さえよう!
「低付加価値モジュール」は低コストで誰かに⽣産してもらう仕掛けを⽤意しよう!
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こんにちは。
前回は、パソコンのアーキテクチャをモジュール化して、各モジュール内で競争を起こせば性能は上がるし、モジュール単価は下がるしで、結果的に⾼性能な製品が安く⼊⼿できてユーザーがハッピー、まで話をしました。
でもそれじゃあモジュールメーカーがハッピーじゃない!ということでグローバル斜形分業が出てきます。

グローバル斜形分業

グローバル斜形分業の肝は、

製品アーキテクチャの中に付加価値の低い領域を作って、そこを新興国にやらせようぜ!

です。
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前述したようにPCアーキテクチャインテル主導の中間⾼速バス⽅式に移⾏しました。
ちなみに新しいPCアーキテクチャを部品メーカーが主導したというのはすごいことですよね。
そして、新しいバス⽅式の普及に重要な働きをしたのが台湾企業です。
台湾企業がインテルチップセットを搭載したマザーボードを⼤量に⽣産し市場に供給しました。
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さらにインテルは、リファレンスデザインという、PCのお⼿本のようなものを販売することで、PCアセンブリメーカーの参⼊障壁を下げる仕掛けも⽤意しました。
当時新興PCアセンブリメーカーだったDellGatewayは、このインテルチップセットが載ったマザーボード台湾から買い、CPUとリファレンスデザインをインテルから買い、PCを組み⽴てることでインテルインサイドなPCを普及させていきました。
この時のインテルのビジネスモデルは、
①安価なチップセットを台湾メーカーに供給することで市場を拡⼤し、
②⾼価なCPUを先進国のPCアセンブリメーカーに供給することで利益を得る、
という2⾯市場戦略です。
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さらにインテルマザーボードの標準規格(ATX規格)も策定し、台湾企業が安⼼して設備投資できる状況を整えました
台湾企業としてもインテルの標準に乗っかっるかどうかは経営判断ですからね。標準技術を公開することで新規参⼊企業の技術的な不安を低減したものと思います。
結果論としては、台湾メーカーも規格品の⼤量供給という競争ルールの変化に対応し、⼤きく成⻑しました。
インテルと台湾企業の間でWIN-WINの関係が構築されています。

このように、モジュール型のアーキテクチャ(中間⾼速バス⽅式)を創造し、
⾼付加価値モジュール(CPU)を⾃社で供給し、
その他の低付加価値モジュール(マザーボードやHDDなど)を新興国に供給させることで、
最終製品の低価格化と⾃社の利益というトレードオフを解消しました。
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CPUの価格が⽐較的⾼⽌まりしているのに対し、最終製品であるPCや代表的な部品であるHDDの価格は右肩下がりですね。
PCアセンブリの代表企業だったIBMはご存じのとおり、すでにPC事業から撤退しています。
ハッピーになった⼈(インテルや台湾マザーボードメーカー)がいれば、そんなにハッピーにならなかったりアンハッピーになった⼈(IBM、その他モジュールメーカーなど)もいます。
みんながみんなハッピーにはなりませんね。

⾼付加価値領域と低付加価値領域の組み合わせで製品アーキテクチャを設計し、
⾼付加価値領域を⾃社でクローズし、低付加価値領域を新興国に任せるという、
グローバル斜形分業が⼤事
という話でした。

個⼈的な感想ですが、⼀部品メーカーが最終製品の新規構造という価値を⽣み出し、さらにそれを直接売るのではなく、撒き餌にして競争優位性を⽣み出したという事実に驚愕しました。(逆にそうしないと低付加価値モジュール側に追いやられる?)
モジュール内で競争するのでなく、⾃社モジュールがOnly Oneになるアーキテクチャを普及させる。できるものなら参考にしたいです。

グローバル斜形分業については下記書籍を参照ください。