のらケミスト

中小化学企業で新規事業とか技術開発している人のブログ。技術的な話とか転職の体験談をご紹介。

Industrie 4.0 調べてみた その2

概要

ドイツIndustrie4.0についてご紹介。
企業の壁を越えて垂直⽔平統合したらメリットいっぱい!
製造業のモジュール化を⽬指すよ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんにちは。
前回は、各国で将来のあるべき製造業の姿について議論が始まったよ、という話をしました。
今回は、Industrie4.0を掲げるドイツがどのような構想を描いているかについてご紹介します。

Industrie 4.0の概要(参考

Industrie 4.0はスマートグリッドスマートホーム、スマートヘルスケア、スマートモビリティなどと並列に位置する、スマートインダストリとでもいうべき思想です。
f:id:tamagoyaki1999:20190814223518p:plain

1. こうなったらいいな:スマートなネットワーク化された世界

  • 価値ネットワークを通じた⽔平統合
  • バリューチェーンを横断するエンジニアリングのエンドtoエンドのデジタル統合(データフォーマットが統⼀されているようなイメージ)
  • 垂直統合とネットワーク化された製造システム

それぞれ⾔葉を⾜してみると、

  • 現在垂直統合的にすり合わされている⽣産⼯程をモジュール化し、各モジュールを得意企業が担当(⽔平統合)、
  • かつモジュール間の連携を端から端まで統⼀されたデータフォーマットで管理(エンドtoエンドのデジタル統合)し、
  • 各モジュール間をネットワークに接続することで垂直統合的に製造することができる(垂直統合)、

新しい製造業を⽬指す。

結局、何⾔ってるかよくわからなかったと思います。
この段階ではいかようにも解釈できる抽象的な話をしているのでよくわからないのが正解で、各⼈がどのような具体像を描くかが⼤切だと思います。

私の理解では、製造プロセスのP2Pです。
どんなうれしいことがあるかというと、

  • マスカスタマイゼーション(カスタム商品もマス商品並みのコストで⽣産できる)
  • 製造プロセスの透明化による適切な意思決定を実現
  • 中⼩企業、スタートアップ企業にも下流のサービスビジネスを実施する機会
  • ルーティン業務からの解放
  • 資源⽣産性と資源効率性の向上
  • ⾼齢労働者の労働寿命の延⻑し⽣産的でいられる時間を延ばす

などなど。これも、具体像が不明確なのでなんでも⾔えるという感じです。
みなさんの気になる効⽤はありましたか?
私からは、今回の連載のアウトプットとして、太字に関わる将来像を⼀つ提⽰したいと思ってます。

2. 実現⽅針を決める:8つの活動⽅針

  • 複雑なシステムの管理
  • ブロードバンドインフラ
  • 安全とセキュリティ
  • 業務組織と業務設計
  • 研修と専⾨家の育成
  • 法律

中でもまず議論しなくてはならないのがリファレンスアーキテクチャです。
リファレンスデザインとは、「将来の産業構造をこうしよう」という⻘写真です。

リファレンスアーキテクチャ RAMI 4.0(参考1参考2

f:id:tamagoyaki1999:20190814223705p:plain
RAMI 4.0は製造業を3つの軸で区切ってモジュール化しています。

  • 階層

わかりやすくするために、現状のヒエラルキーを以下に⽰します。
ヒエラルキーは最上位に企業を置いた従属関係を⽰します。
f:id:tamagoyaki1999:20190814223742p:plain
最上位に会社(Enterprise)があり、
会社の下部組織に部署(Work Centers)があり、
部署内にいろいろな作業場(Station)があり、
作業場には制御機器(Control Device)があり、
制御機器に制御されるバイス(Field Device)があり、
バイスによって製品(Product)が製造される。


次にIndustrie 4.0が⽬指す、いずれはこうなる!というヒエラルキーを⽰します。
f:id:tamagoyaki1999:20190814223815p:plain
現状のヒエラルキーに存在する、Enterprise, Work Centers, Station, Control Device, Field
Device, Productが並列にSmart Factoryに帰属し、それぞれがConnected Worldに接続されます。
会社とか現場というような分類は残るものの、現場とつながるためにまず会社とつながる必要があるような階層構造はなくなっています。
もはやヒエラルキーってなんだっけ?というくらい⾃由度の⾼い構造ですね。


階層について。
f:id:tamagoyaki1999:20190814223846p:plain

  • Asset:現実世界のモノ
  • Integration:現実世界とデジタル世界の変換。このあたりにデジタルツインという思想が⼊ってきます。
  • Communication:情報へのアクセス。インターネットのようなものということでいいと思います。Asset同⼠が接続し、情報のやりとりをすることを担保するために、管理シェルという概念を導⼊しています。
  • Information:情報。
  • Functional:Assetが持つ機能。
  • Business:組織とビジネスプロセス(組織作り・運営とかビジネスモデルとかの話ですかね?)

f:id:tamagoyaki1999:20190814223917p:plain

企画/試作/設計/製造/使⽤/メンテ/廃棄
といった⼀連の流れを⾔います。


このように、産業構造をいろいろな⾓度から整理し、モジュール化するようなことをしています。
みなさんの部場、現場はどのようなモジュールで、そのモジュールがつながっている先(サプライヤー、顧客など)はどのモジュールでしょうか。
(MY Labは、ヒエラルキー軸のWork center, 階層軸のIntegration, Communication,
Business、ライフサイクル軸の企画の交わる領域のモジュールといったところですかね。)
いったいなぜこのようなモジュール化を⽬指しているのでしょうか?
これはPCなど半導体産業で起こったモジュール化によるビジネスモデル⾰新に強く影響を受けているように感じます。
ということで、次回はPC業界のビジネスモデルの変遷についてです。